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2017年10月15日 10時10分

高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限定条件付き免許」…導入への課題

高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限定条件付き免許」…導入への課題
写真はイメージです。

高齢ドライバーの事故対策として、自動ブレーキを搭載した車などに限って運転を認める「限定条件付き免許」について検討する分科会の初会合が10月2日、警察庁で開かれた。時事通信(10月2日付け)の報道によれば、2018年度中に方向性を取りまとめるということだ。

限定条件付き免許については、警察庁の有識者会議が今年6月にまとめた高齢運転者事故防止のための提言でも触れられており、自動ブレーキ搭載車のほかに、高齢者が操作しやすい小型軽量車に限定することや、運転可能な地域や道路を制限することにも言及されていた。

高齢者の事故を減らすことは急務とはいえ、特に公共交通機関の少ない地方では、車がないと死活問題という地域もあるだろう。さらに、自動ブレーキなどが搭載された車種に限定してしまえば、高齢者にとっての負担も大きそうだ。

事故防止を目指すとしても、現在議論されている「限定免許」を導入することには、法的な問題や課題はないのだろうか。交通事故問題に詳しい妹尾 悟弁護士に聞いた。

●必要性・相当性はあるのか?

「この数年、高齢運転者による死亡事故が相次いで報道され、社会的な注目を集めました。

統計によると、死亡事故件全体が減少傾向にある中で、75歳以上の運転者による死亡事故の件数は近年横ばいで推移しており、高齢運転者による死亡事故の割合が増加しています。このような状況を打開して事故を防止するための対策が議論される中で、『限定条件付き免許』の提言も出てきたのでしょう」

限定条件付き免許は、高齢ドライバーの利便性を損なうことにもなる。制度の導入による問題はないのだろうか。

「現在議論されている限定条件付き免許は、一定の車種、地域、時間などに限定するものです。現状で認められている高齢運転者の自由を制限するものですので、制限(規制)する『必要性』と『相当性』がなければなりません。

まず必要性についてですが、制度の導入目的が運転者・通行者を含めた人の死傷を防止するためであること、高齢運転者による死亡事故の割合が増加している事実があります。規制の必要性はあるといってよいでしょう。

高齢運転者の死亡事故件数自体は横ばいであるとはいえ、技術革新や運転者に対する啓発活動によって死亡事故全体が減少しているのに、高齢運転者の死亡事故が減らないこと、守るべき利益が人の生命や身体という要保護性が高い利益であることなどに照らせば、規制の必要性自体は否定されないと考えられます」

●地域や収入についても検討が必要

規制の内容についてはどうだろうか。

「規制の必要性が認められるかは、かなり具体的な判断が必要になるのではないかと考えます。例えば、公共交通機関が少ない地域では、自動車がないと病院への通院や食事の買い物もできない場合もあり得ます。地域ごとの事故の発生率等も考慮しながら、自動車の運転を制限できる地域と、できない地域とを緻密に検討する必要があると思います。

また、自動ブレーキ機能などの事故回避機能が付いた自動車は、まだ高額ですから、ドライバーが誰でも容易に購入できるとは限りません。

所得や保有資産にもよるでしょうが、運転できる車種が高額な自動車に限定されてしまうと、事実上、自動車の運転ができなくなる場合もあるかもしれません。先に述べた、限定できる地域の規制にも関連しますが、一定の地域的要件や収入要件を設けながら、車両の購入費の助成や自動車税の減税措置を講ずることも必要になるかもしれません」

最後に、妹尾弁護士はこれまでの経験をもとに次のように指摘する。

「交通事故事件を扱っていると、悲惨な死亡事故に出会うことも多く、私自身、交通事故の防止策の必要性を痛感しています。一方で、現代社会において自動車は一人ひとりの生活になくてはならないものになっていることも確かです。社会において、人と車のよりよい関係が実現するために、緻密によく考えられた、『運転者にも通行者にも優しい』法規制が実現するといいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

妹尾 悟弁護士
政令指定都市勤務を経て、平成21年に弁護士登録。特殊案件を含む損害賠償事案を注力分野として、交通事故や建築瑕疵などを含む損害賠償請求事件を幅広く手がけている。「法律問題で悩まれたときは、まずはご相談ください。あなたにとって、いちばん適切な対応をご提案いたします」
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